わかりあうって難しい
同じ言語を話す同士でも、自分の気持ちを言葉に変換する時点で微妙にずれてしまったり、誤解をまねく表現になってしまって相手を傷つけたりしてしまうことがあります。
微妙なニュアンスは、言葉だけだと伝わりにくい。
じゃあ、顔を合わせていればよいのかといえば、それもちょっと違います。
コロナ禍により急速に普及した、テレワーク環境でのリモートツールによる打ち合わせ。
画面とスピーカーからの音声では、相手の表情や声の微妙な変化や空気感などは伝わらないし、感じ取れません。
改めてコミュニケーションって難しいなと思います。
「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」で紹介されている“翻訳”。
最新の翻訳技術からはじまり、音のニュアンスを視覚化する翻訳。
そして、人間同士だけでなく植物、サメ、ヌカ(←ぬか漬けの“ぬか”です)などとのコミュニケーションの取り組み。
思いを伝える、思いを感じとるための“翻訳”“コミュニケーション”に関して、様々な試行錯誤が紹介されていました。
興味をひいた作品をちょっと紹介すると・・・
『ファウンド・イン・トランスレーション』
中央にあるマイクに向かって話すと、各モニタにさまざまな言語に翻訳された文字が並びます。
国際会議などで、多言語に同時通訳されるイメージ。
モニタごとに切り替わるタイミングは微妙に異なりますが、コミュニケーションのリズムを保つには十分な変換スピードです。
これは、“google翻訳”と同じタイプの技術を利用したものだそうです。
いつもお世話になっている“google翻訳”。
なんと108もの言語に対応しているそうです。
でも、世界で話されている言語は7,000近くあるそうで、これまた驚きです。
『・・・のイメージ』
空を映し出すスクリーンの前には3つの輪と小さなモニタが設置されています。
輪に手を通して動かすことにより、飛行機を飛ばせたり、雨を降らせたり。
これ、楽しく遊べます。
言葉を補完するコミュニケーションツールというか、ボディランゲージの進化版のように思えました。
『密やかな言語の研究所:読唇術』
植物に読唇術?
これは植物の葉っぱにある気孔(植物が呼吸するための小孔)を人間の唇に見立て、植物の言葉の解釈を試みるものです。
モニターに拡大映写された気孔を見ると、確かに唇の動きに見えなくもないですが・・・。
最後に
昔見たSF映画の中で出てきた、身につけるだけで相手の言葉が理解出来て、こちらの話す言語が相手側に通じる“バッジ”、を思い出しました。
胸に付けた瞬間から双方のコミュニケーションが可能になるツール。
『ファウンド・イン・トランスレーション』で映し出される文字を眺めていると、そんな“バッジ”も夢物語じゃないんだなって思えてきます。
いつか、英語の勉強に苦労することのない時代が来るかもしれません。
とはいえ、翻訳技術の発達で言葉の壁がなくなっても、価値観の違いはなくなりません。
良好なコミュニケーションを築く秘訣は、相手を尊重し、互いに思いやる気持ちを持つこと。
英語の勉強をする必要がなくなっても、相手を理解しようという努力、思いやりの気持ちは今後も必要ですね。
「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」
2021年6月13日 (日)まで。
六本木21_21 DESIGN SIGHTにて。